(前号へ)←                  →(次号へ)

=======================2005/05/ 23(月)

【バナナメール#145 】海の見えるヒマラヤ

目次: 【ごあいさつ】 【ジャカランダの庭で】 【ブックパーティ】 【ブック・パーティー裏話】 【あわてるよね】 【終りよければ】 【首都を離れて】 【詩の世界】 【詩集のご注文】

===============================

【ごあいさつ】

5月の連休も、なんだかはるか昔に終ってしまったような。夏までしばし、落ち着いた日々でしょうか。私は、連休中の1週間、ちょっとネパールに行ってきました。ビシュマ・ウプレティの詩集「海」の出版記念会に出るためです。

ふと思い立ち、でも、連休中はチケットなんて取れないよねえ、とあきらめつつ、いちおう航空会社に問い合わせました。奇跡的に、行きと帰りにそれぞれ一日のみ、都合のいい日取りの空席がありました。これは、行けということか(とまたもやヒンズー的運命論者?)。ばたばたと数日のうちに準備して出発した次第です。

【ジャカランダの庭で】

ブック・パーティーは、お庭の美しいパタンのサミット・ホテルで開かれました。あいにくの曇り空。直前には、通り雨。

大木の枝いっぱいのジャヤカランダが満開でした。でも、曇り空にジャカランダの花は似合わない。抜ける青空があってこそ、ジャカランダは美しく映える、ということに初めて気がつきました。陽の光を浴びないと、紫の花が、くすんで青っぽく見えるのです。

【ブック・パーティ】

ブック・パーティには、ネパール文学界の方々がほとんど出てくださったようです。出席者は、100名近く。久しぶりに、純粋な人々の集まりを楽しみました。静かで上品なエネルギーです。メディアも来てくれて、その夜TVニュース放送され、翌日、新聞に載りました。

私はごく気軽な集まりを企画したつもりだったのですが、みなさんとても真面目に受けとめてくださって、恐縮。急いで現地で作ってもらった冗談ぽいバナナくらぶのバナーは、会場で浮いてなかったかしら?

私は、「海」をイメージして、ブルーのサリーを着て出ました。これは、なんだかテレビ写りがよかったようです。友人のお母さんはじめ、何人かが偶然、見てました。ネパール放送局の友だちも、よかったよ、とメールを送ってくれました。

レストランで打ち上げの会食しているその夜に放送されたので、私たち関係者は見ていないのですが。

【ブック・パーティー裏話】

私は、思いついたら結構短い時間のうちに企画・実行するほうですが、今回のブック・パーティーの段取りには、ちょっと驚きました。

5月6日の午後、とだけ決まっていたブック・パーティ。すべて現地でお任せのはずだったのに、5月2日の昼にカマンズに着いてみると、招待状の印刷どころか、会場も決まっていないではないですか! えっ? 

これもネパールか。スポンサーの私に敬意を表して、最後の詰めをのこしておいてくれた!?

着いたその日のうちに、私自身で会場の候補地をいくつか回って、決めました。内容の打ち合わせをホテル担当者と済ませ、その夜のうちに招待状の文面を書いて、翌日印刷屋さんへ。残り2日で配って回るという離れワザ。

【あわてるよね】

ホテルのスタッフもサービスも、料理もとてもよかった。準備した飲み物、食べ物は、ほぼ予想通りにはけて、楽しいブッフェでした。終りよければ、すべてよし。

ただ、冒険はいっぱいありました。

出来たてのバナナ・バナーを持って、いざ会場へ。サリーひらひらさせて、ヘルメットかぶってバイクの後部席に横のり。でも、乗ったとたんに後悔した。徹夜のあとの24時間飛行(待ち時間も含めて)で、腰痛が来てたんだわ。すっかり忘れてた。悪路が、ぼこぼこ当たるたびに、きゃ痛い。振り落とされそうになる。

ここで転げ落ちたら、どうする。私がいなくても、誰か無事にパーティーやり終えてくれるかなあ。一命取り留めても、ずたずたのサリー姿で、会場に乗り込むわけにいかないし。おお、そうだ、せめてクッポンドールの急坂を登るのはやめてもらおう。ちょっと遠回りだけど大通りのゆるやかな坂を走ってもらいました。

こうして私が会場に駆けつけたのは、1時間前。進行役のアナウンサーと主役の詩人と、お世話役が顔をあわせて、進行段取りを打ち合わせをすることになっていました。でも、まだ誰も来ていない。

人数分の詩集とたくさんのバナナ(いちおうバナナパーティですから)が届けられることになっていたのですが、これもまだなし。

詩人ビシュマとその家族、友だちが着いたのが、やっと20分前。でも、司会もまだ来ない。あれ、受付を誰がするんだろう?

あとで分かったのは、主賓を車で迎えにいったお世話係が、交通渋滞に巻き込まれ1時間の遅れになったこと。その携帯電話が私に預けられていたものだから、連絡とれるわけない!

本も届かず、飾りのバナナもなく、お客も報道陣も集まったのに正面のテーブルに人がいない。さらに、進行役のアナウンサーも来ない。主催者側は、詩人ビシュマと私のみ。

【終りよければ】

代理を立てよう! ビシュマの案で、開始予定15分後には、来客の中から主賓代理と進行代理が決まり、正面テーブルに私も含めて4人着席。でもね、ケガの巧妙で、ほんとに和やかに会が進みました。

まず、大学の外国語学部の先生で詩人のマンジュール・シャルマ氏が司会進行。私は、初対面だったけれど、後で聞いたら、谷川俊太郎氏の友人で、日本の詩のネパール語訳も手がけているとのこと。わ、大先生だった。

全然打ち合わせもできなかった会の内容ですが、まず、ビシュマがネパール語の詩をその場で1篇選んで読み、私がその日本語版を読みました(海その4「カメラに海をおさめたら」)。

主賓の代理スピーチをしてくださったのは、これまた文学史の長老先生。日本滞在も長く、日本の詩についての造詣が深い。明治以来の翻訳詩の歴史についての薀蓄を延べられた。私も勉強になった。翻訳詩のリズムのこととか、フランス語からの翻訳詩が、いかに日本の現代詩の潮流を作ったかということを語られた。

最初は、英語で、そのうちネパール語に切り替わり、また英語に変るというような感じの「レクチャー」でありました(ちょっと、長かったけど)。

それから、私に番が回ってきたので、ビシュマとの出会いと翻訳のいきさつなどを、述べました。それから、ビシュマが、自分の思いを短くスピーチしました。

そこへ、ほんものの主賓のタラナ・シャルマ博士が到着。手配のバナナと詩集も届きました。包んだ詩集の「開封」儀式を博士が、とりおこないました。

さて、文学者シャルマ博士は、エネルギーにあふれ、お話がいつもおもしろい。英国流にネパール風味を加味したウイットのある話術で、遅れた事情さえネタにして、会場はたちまち、明るい爆笑。短かくて引き締まった、海の辛さのあるスピーチでした。

最後に、ビシュマがもう一編読み、私がまた日本語訳を読みました。今度は、ちょっと困った。よりにもよって、日本語訳に一番苦労した詩を選ぶんだから。ネパール語の「裸」、「裸の」が5回も出てくる困った詩なのだ(海その11「海に会いに行ったら、一糸まとわぬ姿で...」)。

「ハダカ」の繰り返しじゃ、詩にならんものね(谷川俊太郎さんは、「はだか」で子供の詩を書いたけど)。翻訳にひと工夫したとはいえ、人前でいきなり裸の詩を読むのは、結構、覚悟がいるぞ。読む前に、ちょっと言い訳ぽい、前置きをしました。

そのあとは、和やかに飲んだり、食べたりの歓談パーティ。いろいろな人と会えて、うれしかったです。バナナくらぶ関係者では、スンダリミカさんが来てくれました。国王から勲章をもらった、ネパールの歌を歌う日本人歌手です。去年はバナナくらぶのライブを東京で2回行いました。

バナナティーガーデンの茶園のヤギャ氏が、その長男ユーグを伴って来てくださいました。また、日本語学校のマンガラ先生も家族三人そろって。次女のドリスティちゃんは、16歳。ますますきれいに、エレガントになってる。いま、日本語勉強中なので、時期が来たら多分日本留学するでしょう。うちでホームスティしてもらおう、と。絶対人気者になるよ。

マンガラ先生のだんな様は、とても親しみやすくて、私は大好きです。日本人みたいな雰囲気なので、私はすぐ日本語で話しかけてしまうのです。いつも、きょとんとされる。なお、長女は、すでに日本留学中。長男は、イギリス留学を目指して猛勉強中。

キャサリンも今では立派なバナナメンバーで、ビシュマのファンです。そして、デザインと印刷担当のシュレスタ兄弟。仲のよい二人の共同経営者は、それぞれが違う得意分野を持ち、いろんな工夫をし、無理を聞いてくれます。仕事がらみの「バナナ冒険」にも付き合ったり、だんだん、私の弟たちみたいな存在になってきました。

遅れてきたけれど、厳選されたバナナは、大きな枝ごと、テーブルを飾りました。100本以上周りについていて、どれも均一に熟れた美しい黄色。壮観でした。思わずみんな、おサルのように群がって、もぎたくなってしまったのも無理からぬことでした。

【首都を離れて】

司会のアナウンサーが現れなかったわけは、後で分かりました。親戚の方が、マオイストの手にかかって亡くなったとのこと。

平和なカトマンズでしたが、少し離れたところでは、まだ闘争が静かに続いている。またも痛ましいことが身近で起こりました。2年前、同じように不慮の死を遂げた友人モハンのことを思い出さずにはいられませんでした。

こうした、昨今の悲しいネパールの現実を詩にした詩人クリシュナも、会場にいました。ビシュマとはまた違った、激しい作風です。ちょうど最新詩集の英訳版が印刷中でした。私に序文を書いてほしいと、日本を発つ日にメールで大量の詩を送ってきました。急ぎなので、バンコクで乗り継ぎを待っている間に、寝ないで書きました(それも、腰痛の原因だったかも)。

もしも、日本語に訳してなんて言われたら、やっかい。よくわかんないことがいっぱい書いてあります。これは、複雑系の詩。英訳したシャルマ大先生が、君の詩には苦労したよ、とクリシュナに言っていました。

【詩の世界】

それにしても、ネパール文学界というのは、詩人が多い。この席で、私も詩人とみなされていたようです。詩集は何冊ぐらい出しているんですか?と当たり前のように聞かれてしまいました。翻訳が好き、というだけでは信用されないのか。

書き散らしたのがいくつかあるから、そう、「もうすぐ出版されます」と答えればよいのだ。やっぱり、詩も書こう! 

ニセ詩人よしこ、近々、誕生するやもしれません。なにしろ、日本語、英語、ネパール語が自由自在の印刷局をネパールに育てたのですから!

ところで、ビシュマの新しい詩集が、私の出発前に出版されました。なんと、恋愛詩集! これがまた、すごくいいの。ピュアで、シンプルで、奥が深い。三冊もらったのだけれど、一冊はネパールの女性に持っていかれた。「私の気持ちとおんなじ!」、とか言って、無理やり、「ちょうだい。」

【ネパールにある海】

なぜ、海の詩なの?  日本に生まれ育つと、海は当たり前のもの。でも、この詩集から、改めて、海の持つエネルギーを感じてください。異文化の中で押しつぶされそうになっていた英国留学中のビシュマを救ったのは、おそらくサザンプトンの海だったのでしょう。

創作月日を巻末のリストで見ていただくと分かりますが、前半にある海の詩は、後半のその他の詩よりも後に出来ています。後半の詩は、海に出会う前のビシュマの苦しい気持ちと、その軌跡でしょう。

最近、はじめて海を見る人の感動を共有する機会がありました。そして、ビシュマの詩集「海」の持つ意味をしみじみ考えました。

「海もまた詩人なのだね」という表現が、ビシュマの詩の中にありますが、海を見る人は、詩人になる、とも言えます。初めての海を体験して、その人から、こんな表現が自然に出てきました。

「もう泣いていないのに、 私の頬になぜ涙がつたわるのだろう。 ああ、海の水は、辛いのか。」

【感想をお寄せください】

ビシュマの詩は、ネパール文学界では、大変高く評価されているようです。 私は、彼の言葉のシンプルさが好きです。短い表現の中にきらりと光るものがあります。出来れば、みなさまのご感想をお寄せください。 どの詩が気に入ったかという、簡単なメッセージでも結構です。

ベトナム時代からずっとバナナ通信の愛読者で、いつも心温まるお便りを下さっていた作家の山田太一さまが、今回も長いお手紙をくださいました。私の好きな箇所をいくつか一部、引用します。

「いきなり海の十五連作。次から次の波のように、ひきこまれて拝読しました。」 「個の静かな世界を味わいました。」 「一糸まとわぬ”海”なんて嬉しくなりました。」 「”望んだわけでもないのに(略)メランコリー”という二行など、ずっと頭につきまといそうです。」 「”人は森には似合わない”とか、”道に立つのは私、動くのは道”とか、ビシュマさんでなくてはという魅力に溢れています。」

【詩集のご注文】

ビシュマの詩集をご注文くださったみなさま、ありがとうございます。ネパールから発送いたしました。郵便事情が不安定やもしれず、もし、まだ着いていない方がありましたら、ご一報ください。また、落丁など不備がありましたら、お取替えします。

Tシャツは別便で発送しました。

ご注文しそびれた方は、下記に注文票がありますので、コピーして、ご返信ください。

ありがとうございました!


【詩集とTシャツ:注文票】 

Order Form

Name:

Mailing Address:

Postal Code:

Email address:

Order:

1.Bhishma's Poetry "The Sea and Other Poems" (Nepali & Japanese)

How many copies? ( ) X ¥800 = ¥ ( )                   送料 一冊につき ¥200

2. T shirts each ¥1800 →  ¥1440 (20%off)

How many pieces? Black ( ) Navy ( ) Grey ( ) Olive ( ) White ( 売り切れました)   送料 1枚につき ¥240  (5枚以上は、送料無料)

3.振込先 

郵便振替番号  00100−6−482112            樋口容視子(バナナガーデン)


バナナくらぶ よしこ

(前号へ)←                  →(次号へ)














1
0
2255


トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2006-11-21 (火) 00:38:16 (3985d)